ゼネコン大手の鹿島が環境関連技術をビジネスとして売り出してゆく。太陽光発電システムのリース事業にも参入した。
鹿島は石川六郎社長が経済同友会の副代表幹事や日商会頭など勤め財界活動に熱心だったことから、業界でも早くから環境対策に取り組んできた。1986年には「建設公害対策委員会」を作り、次いで92年には「地球環境問題に関する鹿島の基本方針」を制定し、98年に「鹿島環境方針」を制定した。2000年には「環境会計」の公表を始め、01年に「グリーン調達指針」を制定している。
こうした環境問題に取り組むと同時に1949年に業界で初めて作った技術研究所で環境分野の技術開発に力を入れてきた。こうした努力で同社の環境技術は業界でもトップクラスの力を持っている。具体的には土壌汚染浄化技術であり、植物を利用したバイオマスエネルギー、水域再生、緑化技術、太陽光発電、風力発電などの新エネルギーなどが上げられる。特に土壌汚染浄化技術では「揮発性有機化合物」「重金属・農薬」「油汚染」などの問題を解決できる技術を持っている。
こうした今まで蓄積した環境関連技術で、環境問題で困っている企業を支援してゆく。鹿島は工場用地や建物を診断して、必要に応じて土壌汚染の原状回復やアスベストの処理などを行う。土壌汚染については、東京都・築地の魚市場の移転先の豊洲にある候補地が土壌汚染の問題で、移転問題が難航している。大阪ではマンションを建て販売したところで土壌汚染の問題が出て、販売した不動産会社の社長が辞任した。こうしたことから10年度から土壌汚染対策費などを反映させる会計ルールが導入される。さらに地方自治体の環境規制も厳しくなってくる。特に東京都は10年度から1300社の事業所を対象に二酸化炭素の排出量の総量の削減義務を課し、できない事業所は罰金を科せられる。
こうした厳しい規制が課せられることから鹿島は土壌汚染対策だけでなく、オフィスビルなどでは電力消費の少ない空調に切り替え、二酸化炭素排出量の削減策を提案する。このように土地や建物の環境対策を切り口にして不動産価値を高める事業はゼネコンといては初めてのことである。
鹿島はビルや事業所の改修工事などの提案で、3年後には400億円前後の受注を見込んでいる。
鹿島はこうした事業だけでなく太陽光発電システムのリース事業に参入した。国土交通省が始めた「新たな温室効果ガス削減環境事業モデル」の第一号に内定して500万円の助成を受けた。鹿島は8月中に都心の土木工事現場の一つをモデル現場とする。プレハブ事務所の屋上に太陽光発電システムを置き事務所の電力をどの程度まかなえて、どの程度のリース料金なら需要があるかを検証する。事業性が確認できれば事業に乗り出す方針である。