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2008.08.19 Tuesday
世界一になったトヨタ自動車の苦悩
 GM、フォードも三重苦で業績悪化
トヨタ自動社は表(1)でみられるように08年上半期に販売台数で482万台と米国のGMを抜き去り、トップに立った。すでに生産量などは世界一になっているが販売台数では初めてである。しかし、トヨタ自動車の渡辺捷昭社長をはじめ張富士夫会長も手放しではこれを喜んではいない。米国のサブプライムローン(低所得者向けの金利が高い住宅ローン)に焦げ付きが出て、景気があっという間に悪くなり自動車の売り上げを下方修正しなくてはならなくなった。特に米国で利益の7割近くを出しているトヨタにとって痛手である。景気の悪化に加えガソリンの高騰による大型車の販売不振、原材料の高値の3重苦に見舞われている。このために大型車を作っているテキサス工場など3工場を8月から3カ月間操業停止し減産する。
 トヨタは08年の世界の販売計画(子会社のダイハツ工業、日野自動車を含む)を当初の985万台から35万台下方修正して950万台に落とした。07年の販売台数(937万台)に比べ1%増とほぼ横ばいである。トヨタが下方修正するのは世界販売計画を02年に発表してから初めてのことである。
 米国ではトヨタだけでなくビック3といわれているGM、フォード、クライスラーも苦戦している。ガソリンの高騰で大型車の販売が不振なことが原因である。特にGMは06年2月のリストラ策で行った配当金を半減した(経済復興06年5月上旬号「GM、フォードが倒産する日」参照)ことで済まずに86年ぶりに無配に転落した。GMは中興の祖といわれてきたアルフレッド・スローン氏が株主を大切にしてきただけに無配になったことは大きな衝撃を経済界に与えた。米国の自動車業界を襲っている3重苦がどうなるかによって、ビッグ3の倒産という事態も避けられないかもしれない。

 米国の自動車市場での苦悩
 トヨタは米国ではGMと共同出資でカリフォルニア州のフリモント市に作った「NUMMI」で米国式の生産販売方法を学んでケンタッキーで単独の工場を作ってから、今では10工場を立ち上げるまでになった。米国の景気が良かったことや円安ということも加わり、トヨタの利益の7割を稼ぎ出すまでになった。ところが07年8月ごろに発生したサブプライムローンの焦げ付きで景気が悪くなった。その上にガソリンが高くなって大型車の販売が不振になった。トヨタは利益幅が大きい大型車のピックアップトラック「タンドラ」や多目的スポーツ車(SUV)の生産に力を入れてきただけに影響をもろに受けた。こうした大型車は米国のメーカーの独占的な市場であったのをまずインディアナ工場で大型ピックアップトラックの生産を開始し、06年秋にはテキサス州で専用工場を稼働した。10年には大型SUVの工場をミシシッピ州に建設し、操業を始める予定。
 こうした大型自動車への傾斜が失敗したことで8月からテキサス工場など3工場を3月間、操業停止して合計で5万台を減産する。また、インディアナ工場の減産で従業員4300人のうち余った約600人の従業員を配置転換することも検討している。一方、米国では中小型車の人気が出ており、特にハイブリッド車のプリウスが品不足になっている。このために現在建設中のミシシッピ工場は当初の大型のSUV「ハイランダー」を年間12万台生産する予定であったが、プリウスなど中小型車の生産をする。立ち上げる前に工場の生産予定車種を変えるのは異例のことである。車種の変更で最初は2010年の稼働が11年にずれ込む可能性も出ている。
 こうしたトヨタの苦戦に対してホンダは小型車の販売は好調で「シビック」の販売増で1−6月の新車の販売台数は前年比4・6%増となり上位6社では唯一プラスになった。シビックを生産する米イーストリバティ工場(オハイオ州)やカナダ工場(オンタリオ工場)では休日稼働で増産する。大型車に力を入れて生産体制を作ったトヨタとの差が出た。

 米国のビックスリーの苦闘
 GMやフォードは05年から06年にかけて日本のトヨタやホンダに押されて巨額な赤字を作り工場の閉鎖や医療費の負担額の減少、人員の削減策を取った。(経済復興06年5月上旬号「GM、フォードが倒産する日」参照)
 GMでは08年までに完成車工場5工場の含む12拠点を閉鎖するリストラ案を出した。一方、フォードも12年までに完成車7工場を含む14拠点を閉鎖する。人員もGMで08年までに3万人、フォードで12年までに2万5千人から3万人削減する。こうしたリストラ策が終わらないうちにサブプライムローンによる景気の後退やガソリンの値上げがあった。このため、米国の自動車市場は販売台数の減少が続いており6月の新車販売台数は前年同期の18・3%減となり8カ月連続で前年を下回っている。特にビッグスリー(米国自動車大手3社)の合計は25・5%の大幅減になった。70年末から80年初めの第二次石油ショックに匹敵する状況になった。08年の新車販売台数は1500万台を割るのではないか、という観測まで出ている。
 こうした中でフォードは4〜6月期決算で最終欠損は約9300億円になった。2四半期ぶりの大幅な赤字。GMも決算は悪いために5月から6月にかけて(胴馥發旅場労働者の4分の1にあたる約1万9千人を削減する⊂型トラックやスポーツ用多目的車(SUV)を生産する北米の4工場を10年までに閉鎖する、という内容のリストラ策を発表した。これらの対策に対して株式市場には効果はなく株が下がり続けたために7月に入り株式の配当見送りやホワイトカラーの労務費の削減、資産の売却などの追加の対策を発表した。
 こうした中でGMとフォードが合併するのではないか、などのうわさも出てきている。

 国内市場も低迷続く
 米国市場だけでなく日本国内の自動車市場も景気の低迷などから縮小してきている。07年の国内の新車販売台数(輸入車を含む)は前年比で6・7%の535万台と3年連続で減った。535万台は1982年以来25年ぶりの低水準である。少子高齢化で購入する人が減ってきている上にガソリン価格が上がったことで消費者心理が冷えていることが要因になっている。国内市場はピークの1990年よりも3割縮小している。
 こうした傾向は08年も続いており08年上半期(1〜6月)の国内の販売台数はホンダを除いて7社が前年を下回った。トヨタは80万台で前年比で2・2%減、三菱自動車は11万台で12・3%減となっている。そうした中でホンダは33万台と3・1%の増加になった。
 日本を走る自動車(排気量660cc以下の軽自動車、二輪車を含む)の保有台数も08年2月現在で7943万台と前年に比べて0・25%減になった。07年12月末と08年1月末も0・1%減になっており3月連続の減少は63年以来例のないことである。戦後初めてである。米国、英国、ドイツ、フランスは06年まで保有台数は増えており先進国では日本が初めてのことになる。電車などの交通網が発達している都市部への人口の集中やガソリンの高騰などが消費者の車離れを引き起こしている、とみられる。
 国内での販売が減っている中で自動車の輸出は増えている。自動車メーカー12社の08年度の輸出台数は約700万台に達して23年ぶりに過去最高を記録する。最大の輸出先の北米は景気の減速で8%前後減るが、原油が上がって景気が良い中東やロシア、中南米など資源国向けに増やしている。こうした輸出の増加が国内の販売減を補って国内生産を下支えしている。

 中国市場は好調
 07年12月にトヨタの渡辺社長はロシアのサンクトペテルスブルグ郊外の新工場でプーチン大統領を迎えた。次いで中国の天津工場に飛んで、福田首相の案内役を務めた。トヨタにとって中国の市場は魅力的である。13億人が自動車に乗ったことを考えると早くシェアを取らなくてはならないと考えている。いまや米国に次いで中国は大きな市場である。ホンダ、日産に次いで出たトヨタだが日本のメーカーではトップのシェアを持っている。広東省広州市に乗用車の第二工場を作っており09年半ばに操業する。この工場ではカムリを年間12万台生産する。トヨタの07年の生産能力は64万台で、ホンダの53万台を上回っている。新たに広州の第二工場が操業すれば中国での生産能力は90万台になる。トヨタの1割は中国で販売することになる。
 中国では環境問題がうるさく言われてきており、プリウスを四川一汽トヨタの長春工場で生産し販売している。07年は1千台と計画の3分の1の売れ行きである。価格が高いことが響いているようだ。2010年にはカムリにハイブリッド車を投入して中国の環境対策に協力してゆく。広州の第二工場でガソリン車とともにハイブリッド車を生産してコストダウンを図って行く。トヨタは2011年には100万台体制に増やしてゆく。

 公害対策車はどうなるのか?
 京都議定書の約束機関が始まったことなどから温暖化対策が自動車メーカーにも迫られている。トヨタ自動車やホンダなどはハイブリッド車を世界展開してゆく。一方で三菱自動車や日産自動車は維持費の安い電気自動車の開発を進めてゆく。二つの流れの中で対策車の普及がすすんでゆくのだろう。
 トヨタ自動車はタイと豪州でハイブリッド車の生産に乗り出す。カムリのハイブリッド版をタイで09年末、豪州で10年に生産を始める。トヨタのハイブリッド車の世界生産は07年で約43万台と10年代の初めには100万台を超える見通し。
 一方、三菱自動車は09年に軽自動車「i(あい)」をベースにした電気自動車を発売する。当初は年産2千台だが11年には1万台の体制にする。日産も電気自動車を10年には日米で発売して12年から世界各国で発売する。
 ホンダは新型燃料電池車の「FCXクラリオ」を08年11月から日本で月6万円でリース販売を始める。  

| 経済・財界 | 09:06 | comments(0) | - | pookmark |
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